YAS Person | Interview

  • TOP
  • YAS Person
  • 16 アクサルタ コーティング システムズ合同会社(前編)
16 アクサルタ コーティング システムズ合同会社

YAS(ヤナセオートシステムズ)は、自動車メーカーが設計した車本来の性能復元を目指し、輸入車パーツやアクセサリーの販売やリビルト・レストアなど、様々な分野において高品質なサービスを提供している。そしてその中のひとつとして挙げられる板金塗装もまた大きなウエイトを占める事業である。今回はYASの長年のパートナーであり、150年以上の歴史を持ち世界トップシェアを誇る補修塗料メーカー、アクサルタ(旧デュポン社)の國宗明宏氏と、YASの早川卓史氏に、両社の繋がりやこれからの塗料界の展望を伺うことにした。

塗料業界において150年もの長い歴史を持ち、市販車両からメルセデスAMG・ペトロナスのF1チームまで
幅広く塗料を供給しているアクサルタですが、YASとの繋がりや関係性について教えてください。

國宗:現在アクサルタは世界トップの補修塗料メーカーとなりましたが、今日に至るまでには様々な塗料ブランドの買収を繰り返してきました。

アクサルタ 國宗 明宏
アクサルタ 國宗 明宏
ヤナセオートシステムズ 早川 卓史
ヤナセオートシステムズ 早川 卓史

早川:古い話になりますと、ヤナセの社史に書かれているように、1920年代には当時のデュポン社が開発したデュコ塗料の取り扱いを始めています。当時はまだボディの塗装に漆を用いているような時代で、漆は屋外での使用には向いておらず、太陽光や雨風に当たるとヒビが入ってしまいました。そのような時代に吹付け方式のデュコ塗料に着目したのは幅広い視野を持つヤナセならではの事だったと言えるでしょう。そのデュポン社は90年代にはハーバーツ社を買収しましたが、後に塗料部門はカーライル社に買収され、こんにちではアクサルタとなりました。ヤナセ(現YAS)
とデュポンの関係は深く、それが現在のYASとアクサルタ(旧デュポン社)の繋がりとなっています。

國宗:YASはプレミアムインポートカーのボディ修理をメインに行っているブランドです。オーナーの多くは愛車に対して強いこだわりを持っており、そのような方々に納得していただける塗料、そして補修塗料を供給しなければなりません。地球環境問題も視野に入れながら、原材料から自社開発するアクサルタは、メルセデス・ベンツをはじめ世界中の自動車メーカーから公認を受けています。そういった背景もあり、YASとのパートナー関係も重要なポイントとなっているのです。

國宗
お二人の画像1
お二人の画像2

自動車がモデルチェンジやニューモデルが開発され、年々進歩してゆくように、塗料も新しい技術開発が進められていると思います。過去から現在でどのように進化してきたのか、その動向をお聞かせください。

國宗:日本で自動車の補修などで使われている塗料の多くは溶剤系のものです。しかし環境問題に対して真摯に取り組んでいる欧州の基準では、水性塗料の使用が定められています。アクサルタの扱うベースコート塗料は100%水性です。過去日本においても水性塗料を推進する機会は今までもありましたが、残念ながら徹底するまでには至っていません。

國宗
早川
早川

早川:それこそ塗料の技術開発の裏には、YASとアクサルタの歴史、そして強力なパートナー関係を構築したことが重要なポイントとなっています。2000年代に入りヤナセ(現YAS)のBP(Body&Painting)部門の活動が活発になりアクサルタとの協力関係が深まっていきました。2004年には各センターが別々に購入していたアクサルタ(旧デュポン社)の塗料をヤナセ(現YAS)のBP部門が纏めて購買できるシステムを構築する準備を開始しました。メルセデス・ベンツでは2003年に登場したCLクラスからクリヤーコートに、ナノレベルのセラミック粒子を含有する「耐擦傷性クリヤーコート(ナノ粒子クリヤーコート)」の採用を開始しています。ヤナセ(現YAS)BP部門はナノ粒子クリヤーコートの施工についてアクサルタ(旧デュポン社)と共同研究し補修プログラムを確立し、内製工場だけでなく協力工場においても確実に施工できる体制を整えるために全国各地でYAS(ヤナセ)独自のトレーニングを実施しました。「YANASE The Bodyshop Network Standard」というマニュアルを製作し、それを技術者に覚えてもらうことで均等な品質を確保していったのです。
次に訪れた大きな出来事は2007年に我々が第一世代の水性塗料と呼んでいるスタンドックスブランドの塗料、スタンドハイドの使用を開始したことです。これは環境問題に対し自ら率先して対応してゆくことの表れでもあり、ヤナセ(現YAS)とアクサルタ(旧デュポン社)で共同記者会見も行いとても注目されました。ただし使用し始めたまでは良かったのですが、このスタンドハイドはとても施工が難しかったのです。まず希釈するために純水を使用するため湿度の影響を受けやすく四季のある日本の環境下ではトラブルが多く発生しました。表面張力を起こしやすいために塗膜が厚くなってしまったり、湿度が高いと静電気を帯びてハジキの原因となりました。乾燥方法も温風乾燥ではなく、塗っては自然に乾かすことを何度も繰り返し行わなければならなかったので、塗料内部に水がこもるソフトフィルム状態などになってしまうことを避けるために乾燥には非常に時間が掛かりました。水性塗料の調色データがほとんどなく、原色の特性も解らなかったので、カラーデータの作成をしながらの塗装作業を進めるため1台を仕上げるのにとても苦労をしたのです。それに適応して上手に使用できる工場もありますが、ネットワークを組む工場には様々な設備レベルの違いがあり、そのすべてを均等にすることが難しかったこともあります。もちろん水性塗料に変えたからと言って完成品質を下げることは許されず、ヤナセ品質を守り抜くことを前提とした結果、スタンドハイドの全国展開をいったん断念することになりました。

後編へ続く

お二人の画像3
お二人の画像4

アクサルタ様トレーニングセンター

トレーニングセンター1
トレーニングセンター2 トレーニングセンター3
トレーニングセンター4
トレーニングセンター5
トレーニングセンター6
Page Top